●母からのバースデーイヴプレゼント
昨年のバースデーイヴに、実家の母から電話があった。
「お誕生日おめでとう。」
「ありがとう。でも、今日じゃなくて、明日だよ。」
「あら。ついにボケだかしら。あなたが産まれた日も、こういうふうに
すごおく暑くて。。。妹のYちゃんが生まれた日は大雪で、。。。
でも、まあ、今となっては、楽しい思い出だわ。あっはっは。」
産んだ親にまで誕生日を間違われるようになったか、と一瞬思ったが、
生まれてはじめて母の口から「楽しい思い出」という言葉を聞いて、
無性にほっとした。
産む前も、産んだ後すぐも、ずっと働き続けていた母は、いつも
とてもとても忙しそうで、いつも機嫌があまりよくないように思えた。
私はずっとその不機嫌の理由が自分の存在にあると思えてならず、
いったい私はどうしたら許してもらえるのだろうと、ずっとずっと
悩みをかかえて生きてきた。
そんな母が、本当にはじめて放つ「楽しい思い出」という言葉の一角に、
私が生まれたというイベントがあるとするなら、やっとこれで
生まれてきても大丈夫だったんだ、と思うことができる。
そして何より、母が自分の人生を少しでも楽しかったと思えるようになった
ことが、私には何よりのプレゼントだった。
バースデーイヴにこの言葉が母の口から聞けてよかった。
それまでのどの誕生日よりも、安心して誕生日が迎えられるから。



